【記入例つき】個別支援計画書とは?~作成の流れと書き方~

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障害福祉サービスを提供するにあたり、障害者施設で必ず作成するのが個別支援計画書です。個別支援計画書は、利用者に対してどういったサービスを提供するのかを示した契約書のようなものです。

個別支援計画書の作成は法令で義務づけられており、正しく作成されていない場合は、報酬の減算や行政指導の対象となってしまう場合もあります。本記事では、個別支援計画書の書き方から作成の流れや様式、作成例や作成のポイントをお伝えします。

・「児発管になったけど、個別支援計画作成の作り方が分からない」
・「そもそも個別支援計画書って何?」というスタッフや保護者の方
・「実地指導が入る予定だけど、現場の実務について分からなくて不安…」
 
といった事業者の方は、本記事を読むことで個別支援計画の実践的な作成方法が理解できるようになります。

個別支援計画書の作成が必要な障害福祉サービス
・児童発達支援、放課後等デイサービス、共同生活介護、就労移行支援、就労継続支援A型、B型、自立訓練、生活介護、療養介護等

個別支援計画書とは?なぜ重要?

個別支援計画書は、支援の中でどのような役割を果たし、なぜ重要なのかについて解説します。個別支援計画がどういったものかを理解することで、より良い計画を作成できるようになります。

個別支援計画書は・・

  • 個別支援計画書は福祉サービスの契約書
  • 法令でも作成が義務付けられている
  • 作成されていないと罰則がある

個別支援計画書はサービスの契約書

個別支援計画書は、事業所がどういったサービスを提供するかを記載した、いわば契約書のようなものです。利用者の特定等を把握し、どういった支援を行うかを記載し、明示します。事業所およびスタッフは、それに基づいてサービスを提供することで、計画的に効率よく支援を行えます。

また、利用者や保護者も、個別支援計画書があることで、安心してサービスを受けることができます。

法令で作成が義務付けられている

法的にも、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業の設備及び運営に関する基準」の中で個別支援計画書の作成が義務付けられています。また、児童発達支援管理責任者の有資格者が作成しなくてはならない点も注意が必要です。

障害福祉サービス事業を行う者(以下「障害福祉サービス事業者」という。)(次章から第八章までに掲げる事業を行うものに限る。)は、利用者の意向、適性、障害の特性その他の事情を踏まえた計画(以下「個別支援計画」という。)を作成し、これに基づき利用者に対して障害福祉サービスを提供するとともに、その効果について継続的な評価を実施することその他の措置を講ずることにより利用者に対して適切かつ効果的に障害福祉サービスを提供しなければならない。

(障害福祉サービス事業者の一般原則)第三条

個別支援計画書の不備は処罰の対象となる

個別支援計画書の作成に不備があった場合、就労支援系や放課後デイ、児童発達支援等の障害福祉サービスにおいて、「個別支援計画未作成減算」が適用され、報酬を減算されます。また、作成されているかどうかだけではなく、正しいプロセスで作成されているかどうかも判断のポイントとなります。

また、長期にわたり個別支援計画が作成されていない等の場合は、行政指導の対象となったり、最悪指定取り消しになる可能性もあります。個別支援計画書は、正しいプロセスに沿って速やかに作成することが重要です。

障害福祉サービス事業者等に対する指導事例 

個別支援計画書作成の流れ

では、正しいプロセスで個別支援計画を作成するにはどのようにすればいいのでしょうか。作成書類も含め、作成の流れを児童発達支援の場合を例にご紹介します。

個別支援計画の手順
  1. アセスメント
  2. 個別支援計画の原案作成
  3. サービス担当者会議
  4. 計画の修正、保護者様の同意と署名
  5. サービス提供(モニタリング)
  6. 更新
    上記のサイクルを繰り返す
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➀アセスメント

保護者様と面談し、聞き取りをします。原則、 児発管が面談します。見学 体験時に行う場合もあります。本人の障害特性を把握し、現状の課題や本人、家族のニーズを整理します。特に児童発達支援の場合は、本人が上手く意思表示ができず、家族のニーズばかりが優先されてしまう場合があります。支援者は、専門家として本人の意向もくみ取りながら、アセスメントを行うことが大切です。

作成書類

  • アセスメントシート
  • 面談記録

➁個別支援計画の原案

アセスメントを元に、個別支援計画原案を作成します。利用者・家族の生活に対する意向や総合的
な支援の方針、生活全般の質を向上させるための課題、提供するサービスの目標と達成時期、サービスを提供する上での留意事項などを盛り込みます。OJT中の児発管でも作成出来ます。フェイスシート 、サービス等利用計画案もこの段階で用意出来るとスムーズです。

作成書類

  • 個別計画の原案

③サービス担当者会議

指導員などのスタッフも含め、 作成した個別支援計画の原案の内容について担当者会議を行います。アセスメントと現状のずれがないかを把握し、話し合いを元に、短期目標、長期目標など計画の詳細な内容を作成します。

支援内容については「〇〇を頑張る」といった不明瞭なものではなく、「いつ」「どこで」「誰が」「どんな」といった形で、具体的かつ明瞭に定める必要があります。

作成書類

  • 担当者会議の議事録

➃計画の修正、保護者様の同意と署名

担当者会議を元に修正した計画を、実際の計画書を示しながら保護者様に説明、交付した上で、同意と署名を貰います。押し印が慣例となっていますが、自治体によっては署名のみという自治体もあるようです。心配な場合は、念のため印鑑を貰っておいた方が安心です。

作成書類

  • 個別支援計画 ( 署名あり)
  • 受給者証のコピー

➄サービス提供(モニタリング)

個別支援計画に基づき、サービスを提供します。支援を行っていく際は、スモールステップを意識し、達成できた目標については振り返りを行う様にしましょう。また、経過をモニタリングとして記録しておきます。

作成書類

  • 支援記録
  • モニタリング

⑥更新

「PDCA]の手法に則り、 6か月以内に、 個別支援計画を更新します。 なお、目標達成の評価については、単に目標を達成したかどうかという目線ではなく、目標達成に対して効果的な支援が出来たかどうか、支援内容が効果的であったかどうかの客観的な評価を行う様に留意しましょう。更新の際にも、同意と署名が必要です。上記が個別支援計画作成までの一連の流れです。

管理者や児発管としての業務と並行して行うため、効率良く進めることも大事ですが、
・児童と保護者が何に困っているか?(主訴は何か?)
・事業所が提供する療育とのすり合わせ
・保護者が理解出来る内容になっているか?
などの課題も押さえておきましょう。これらの内容は、研修でも学ぶポイントです。

児童発達支援ガイドライン

個別支援計画書の書き方・記入例

個別支援計画書の書き方、および記入例について、実例に近い形解説します。なお個別支援計画書については、決まった様式がなく、障害福祉サービスごとに異なります。自治体によっては、参考様式を公表しているところもあるので、迷ったらまず所属の自治体に様式があるかどうかを確認するといいでしょう。

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(名称等は全て架空のものとなります。)

それぞれ項目別に説明します。

➀利用者氏名・・利用者の氏名を記載します。
➁作成日・・年月日入りの作成日を記載します。サービス担当者会議の記録など、その他の書類と日付が前後しないよう注意しましょう。
③次回モニタリング日・・必須ではないですが記載しておくと管理がしやすくなります。

➃ニーズ・・本人、および家族のニーズを記載します。アセスメントなどの内容と矛盾がないように注意しましょう。

➄目標・・長期目標、および短期目標を設定します。短期目標は三ヵ月~半年、長期目標は1年程度をスパンに考えます。

⑥支援項目・・発達に関する支援を書く発達支援、家族への支援を書く家族、支援地域との繋がりや生活についての地域支援があります。それぞれの割合は発達3:家族1:地域が望ましいとされています。

具体的な到達目標・・支援期間終了後に到達しているであろう【子供・家族】の様子を記載します。主語は利用者、家族と考えて書くようにしましょう。

⑧支援内容・・目標達成のために、どのような支援や工夫、配慮を行うのかを具体的に記載します。家族支援、地域支援の場合も具体的な働きかけを記載します。主語は事業所となるよう意識しましょう。

⑨支援期間・・目標達成までの支援期間を記載します。長期目標、短期目標の期間との整合性に注意しましょう。

⑩担当者・・誰が支援の中心となるのかを記載し、役割を明確にします。

⑪優先順位・・ニーズや今の状態に合わせ、支援の優先順位を記載します。

⑫説明者・・個別支援計画の説明者を記載します。

⑬署名欄・・説明者、および児童発達支援管理責任者、保護者の署名、交付日を記載します。保護者の印鑑については、各自治体によっても取り決めが異なります。
※紹介した様式は一般的なものです。自治体によっては様式が用意されている場合があるので必ず障害福祉課等で確認するようにしましょう。

記入のポイント

個別支援計画には決まった様式はありませんが、ガイドラインに基づき、以下の項目は必須と考えましょう。また、特に支援内容については、誰がみてもどんな支援を行っているか分かるように具体的に記載し、担当スタッフも明確にします。

記載項目

  • 本人、家族のニーズ
  • 長期目標、短期目標
  • 支援内容(発達支援、家族支援、地域支援)
  • いつ、誰が、どこで、どのように、どのくらい支援するか
  • 説明者、児童発達責任者、保護者欄

児童発達支援計画に、子ども本人のニーズに応じた「支援目標」を設定し、それを達成するために必要な支援について、「発達支援(本人支援及び移行支援)」、「家族支援」及び「地域支援」
で示す支援内容から子どもの支援に必要な項目を適切に選択し、その上で、具体的な支援内容を設定するものである。なお、選択した支援内容の項目については、具体的な支援内容と共に、児童発達支援計画に明記することが必要である。また、「いつ」、「どこで」、「誰が」、「どのように」、「どのくらい」支援するかということが、児童発達支援計画の中に常に明確になっていることが必要である。

厚生労働省 児童発達支援ガイドライン

個別支援計画書の作成に必要な書類とは?

個別支援計画書の様式や作成する書類には法令上は明確な規定はありませんが、条例や自治体のガイドラインで定められている場合がありますので、必ず確認しましょう。下記は栃木県の研修での事例集で提示されている書類です。作成の際の参考にしてみてください。

個別支援計画書作成に必要な書類

  • サービス担当者会議録
  • アセスメントシート
  • 面接記録
  • 個別支援計画原案
  • 担当者会議録
  • 個別支援計画書(作成者、保護者等の署名)
  • 支援記録
  • モニタリング


https://www.pref.tochigi.lg.jp/e05/documents/documents/jirei11.pdf

個別支援計画書のテンプレート(ひな形)

個別支援計画書については、各自治体等で様式が紹介されていますが、ここでは東京都のテンプレートの取得方法を紹介します。

東京都障害者サービス情報
    ↓ 
書式ライブラリー
    ↓
F 集団指導資料
    ↓
4-2 参考様式(編集可能)〚令和3年度版〛
(4-1 集団指導資料(児童発達支援・放課後等デイサービス・医療型児童発達支援・居宅訪問型児童発達支援・保育所等訪問支援)〚令和3年度版〛の一つ下にあるものをダウンロードして下さい

個別支援計画を現場で運用するポイントは?

個別支援計画は、アセスメントや担当者会議を行い、さらに現場の状況をみて、正しいプロセスで作成する必要があります。支援をする上で最も重要な書類であるだけに、時間もかかります。現場では、効率よく質の高い個別支援計画書を作成する必要があります。ソフトを使ったり、事例集を活用することで、作成の時間も短縮することができます。

作成のポイント

  • パターン分けしたテンプレートを自作する
  • 入力されているソフトを使用する
  • 事例集を参考にする

実地指導でひっかかりやすい個別支援計画書の注意点とは?

個別支援計画書は、障害福祉サービスの契約書ともいえる書類です。そのため、実地指導の際にも特に厳しくチェックされる書類となります。不備があると、減算や行政指導の対象になったり、全く作成がされていない場合は、最悪指定取り消しの可能性もあります。各都道府県が公表しており、実際に実地指導の際に対象とされた項目をお伝えします。

  • 作成者が児発管ではない(指導員や管理者の名前になっている)
  • 更新日が6か月以内ではない(日付はよく確認して下さい)
  • 保護者に署名を貰っていない(署名だけでなく、日付も必要です)
  • 原案、会議録、モニタリングが抜けている(更新の際のモニタリングの抜けも注意)
  • 氏名や日付を間違っている
  • 記載すべき対象の加算を、記載していない(記載が必要な加算は、別途確認が必要です)
  • 個別支援計画未作成減算をせず、不正に請求していた。
  • 個別支援計画が画一的

個別支援計画書が未作成の場合は「個別支援計画未作成減算」で大幅減算

個別支援計画書に不備がある場合、特に注意したいのが個別支援計画未作成減算です。未作成とみなされると【減算が適用される月から2月目までは所定単位数の30%を減算、3月目からは所定単位数の50%を減算(厚生労働省告示第五百二十三号)】と大幅減算が適用されます。個別支援計画は、サービス開始前に速やかに作成しましょう。

大阪市実地指導例

個別支援計画書に関するよくある質問

その他個別支援計画書によくある質問をまとめました。

Q.個別支援計画書の作成者は児発管じゃないとダメですか?」
A.個別支援計画書を作成できるのは児童発達支援管理責任者(サービス管理責任者)のみです。管理者等は作成できません。

Q.保護者(利用者)の署名は確実に必要ですか?
A.保護者または利用者の署名は必ず必要となります。サービス受給者に対して説明して同意を得ることが法令で定められています。なお、印鑑については最近では必須といていない自治体もあります。
(平成24年厚生労働省令第16号)

Q.以前の事業所とは全く様式が違うのですが決まった様式はありますか?
→自治体や事業所によって様式は様々です。支援計画、署名欄など最低限必要な事項を記載し、自治体によっては様式を公開しているので確認してみて下さい。

Q.モニタリング期間はどのくらいの間隔でしょうか?
A.児童発達支援や放課後デイサービスの場合は、半年(6ヶ月)となっています。またサービスによっては三ヵ月とされているところもあるので、自治体に確認しましょう。

まとめ

個別支援計画書は障害福祉サービスを提供する上で最も重要な書類です。それだけに、実地指導などでも特に厳しくみられるポイントです。利用者のためにも、事業所のためにも、各自治体の規定にそって正しく作成しましょう。

また、モニタリングや担当者会議など、必要なプロセスを踏み、それぞれの記録をしっかり残しておくことが大切です。

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