【チェックリストあり】児発・放デイの実地指導とは?監査との違い、対策を徹底解説!
実地指導は、障害福祉サービスや介護サービス運営者にとって、怖いと感じるものですよね。普段から適正に運営していれば実地指導にひっかかることはないかと思いますが、実地指導の内容によっては、その場で監査となり、最悪指定取り消し処分になってしまうこともあります。
そこで本記事では実地指導がどのようなものなのか、また実地指導の対策、実地指導のチェックリストなど、実地指導を無事に乗り切るための方法を紹介します。
実地指導とは
実地指導は、都道府県または市区町村など自治体の担当者が、放課後等デイサービスや児童発達支援施設など、障害福祉サービス等が適正に運営されているかを確認するための指導となっており、「指定障害福祉サービス事業者等指導指針」にその内容が示されています。
この指導指針は、市町村等が、~~~基本的事項を定めることにより、自立支援給付対象サービス等の質の確保及び自立支援給付の適正化を図ることを目的とする。
指定障害福祉サービス事業者等指導指針より一部抜粋
実地指導の対象となる主な障害福祉サービス
・児童発達支援、放課後等デイサービス、共同生活介護、就労移行支援、就労継続支援A型、B型、自立訓練、生活介護、療養介護等
指導の種類、選定基準・指導方法は?
また、指導には実地指導の他に集団指導もあります。両者は指導という点では同じですが、指導方法や選定方法、通知方法がことなりますので、覚えておきましょう。
実地指導の概要
実地指導は、都道府県または市町村が障害事業所に実際に出向いて行います。また選定基準はおおむね3年に1度となっていますが、利用者からの苦情や重大な違反の可能性がある場合には、1年など短い基準で選定される可能性があります。原則として実施の一ヶ月前に通知され、書類の確認や面談等を行います。
実施指導の選定基準、通知等
- 実施主体は都道府県または市町村
- 障害事業所(実地)にて実施
- 実施期間は3年に1度(重大な違反等の可能性がある場合は短くなる)
- 一ヶ月前に通知
- 書類の確認や面談等を実施
集団指導の概要
集団指導は、都道府県または市町村が、指定事業所を一定の場所に集めて行います。選定基準は原則全ての事業所が対象ですが、新規開設した事業所は1年以内に集団指導を実施するように選定され、その他虐待等が疑われるなど指導が適切と思われる事業所は重点的に選定されます。指導対象になった場合は決定後通知され、過去の指導事例などを元に講習形式で行います。
集団指導の選定基準、通知等
- 実施主体は都道府県または市町村
- 所定の場所にて実施
- 新規事業所については1年以内に指導対象となる
- 決定後に通知
- 過去の指導事例などを元にした講習形式
実地指導と集団指導の違い
指導方法 | 実施主体 | 形式 | 選定基準 | 通知 | 指導内容 |
---|---|---|---|---|---|
実地指導 | 都道府県または市町村 | 事業所での指導 | 原則3年に1度 | 実施日一か月前 | 書類の確認・面談 |
集団指導 | 都道府県または市町村 | 所定の場所での指導 | 新規開設事業所は1年以内 | 決定後速やかに | 過去事例等の基づいた講習 |
実地指導と監査の違いとは
実地指導と監査は混同されがちですが、両者はまったく別のものです。実地指導はあくまでも指導であり、指定の取り消し等の処分を行うものではありません。しかし、実地指導中に重大な違反等が疑われる場合は、監査に切り替わります。監査の場合は、権限に基づき、指定の取り消しや給付費の返還、さらには罰金を徴収される可能性があります。
監査の場合は、勧告、命令、指定の取り消し、給付費の返還、返還される給付費の40%を徴収、といった措置をとられる場合があります。
また虐待や不正請求といった重大な違反が疑われる場合、事前通知なく監査が行われる場合もあります。実地指導、監査について、いつ行われてもいいように、日頃から法令を尊守した運営を心がけましょう。
監査になった場合に行われる処置
- 勧告(従わない場合は公表)
- 命令(命令を公示)
- 指定の取り消し
- 給付費の返還
- 返還額に40%を乗じた額を徴収
実地指導中に以下に該当する状況を確認した場合は、実地指導を中止し、直ちに「指定障害福祉サービス事業者等監査指針」に定めるところにより監査を行うことができる。
指定障害福祉サービス事業者等指導指針第6項
指定の取消等
指定基準違反等の内容等が、法第50条第1項各号、同条第3項で準用する同条第1項各号(第12号を除く)、第51条の29第1項並びに第2項、及び第68条第1項各号のいずれかに該当する場合においては、当該障害福祉サービス事業者等(のぞみの園を除く。)に係る指定を取り消し、又は期間を定めてその指定の全部若しくは一部の効力を停止すること(以下「指定の取消等」という。)ができる。
指定障害福祉サービス事業者等監査指針第4項
実地指導のポイント
・実地指導の流れは、資料の事前提出→実地指導→指摘事項の確認と対応です
・当日は、現地調査の後、書類の確認が行われます
・チェックリストや資料を活用して、書類を揃えましょう
実地指導の流れ
では、実際に実地指導の対象のなったらどうすればいいのか、実際の流れについて対策も含め紹介します。準備すべき書類については後述していますので、そちらもご確認下さい。
➀通知(1か月前)
実地指導対象の事業所に選ばれると、自治体より通知が届きます。通知には、実地指導の日付、および事前提出の資料、当日準備するべき資料が記載されています。通知を受け取ったら、速やかに資料の準備を始めましょう。
➁事前資料提出(10日前)
事前確認が求めらている資料を用意し、提出します。自治体によっても異なりますが、概ね10日前までの提出が一般的となっていますが、必ず担当者に確認するようにしましょう。
③実地指導(当日)
当日は、事業所にて現地調査、および書類の確認を行います。
・事業所の現地調査
30分~1時間ほどかけて、
・事業所平面図との整合性
・感染防止、安全対策、避難経路等の確認
を行います。
・書類の確認
個別支援計画書、契約書など書類の確認を行います。おおむね6~7時間程度の時間かけて、入念に行われます。「研修の会議録はどこにありますか?」など質問されることがありますので、当日は現場の職員以外に、現場全体や管理状況がわかる職員を確保してくとスムーズです。管理者、および児童発達支援管理責任者等、現場職員のリーダーといった職員に対応をお願いしましょう。
④指導結果の通知・改善報告(実地指導後)
実地指導終了後は、約1ヶ月程度で指導結果が通知されます。また指導にて改善を指摘された項目について、改善状況報告書(自治体により形式はことなります。)を提出します。
東京都では、「改善状況報告書」という様式で、
・改善を要する事項
・改善状況
・改善の時期
を記入し、
・改善した証拠書類
を提出します。
様式例:改善状況報告書(東京都)
改善した証拠書類も必要なことに留意してください。記載例は以下です。
・八王子市の報告書の記載例 (介護サービスの記載例です)
https://www.city.hachioji.tokyo.jp/kurashi/welfare/753963/8522844/p021595_d/fil/kaizen_cyuijikou.pdf
・豊島区の記載例(障害福祉サービス事業所向けなので、恐らく一番分かりやすいです)
https://www.city.toshima.lg.jp/488/documents/kaizenjyoukyouhoukokusyonokakikata220928.pdf
実地指導の準備とは
では、実際に実地指導の対象になってしまったら、どのように準備を進めていけばいいのでしょうか。実地指導を無事に乗り切るためには、普段の運営はもちろん、事前準備や当日の対応もしっかりとこなす必要があります。そこで、実地指導対象の事業所となった場合の準備について解説します。
通知内容の確認
実地指導の通知所が届いたら、まずすることは通知書の確認です。指導の日付、時間、事前に準備する書類、当日準備する書類の確認を行います。
担当スタッフを決める
指導事項の確認がお終わったら、書類の準備や当日の受け答えなど、担当するスタッフを決めましょう。特に当日は、通常の営業より多めにスタッフを配置し、質問に答えられるよう、管理者や児童発達支援管理責任者は当日在籍するようにしましょう。
書類の準備
スタッフの役割分担が終わったら、書類の準備に取り掛かります。書類によっては、管理者等でなければ準備できないものもあります。書類の種類ごとに、用意するスタッフを決めると準備がスムーズです。具体的な書類や、指摘されやすい事項については、後述する箇所を確認してください。
実地指導で必要な書類、よくある指摘事項とは
実地指導では、書類の準備が最も大変な作業となるかと思います。用意すべき書類は、自治体や指導によって異なります。自治体より、チェックリストや自主点検シートなどの資料が事業種別や運営法人ごとに分かれて公開されていますので、各自治体の様式を確認しておくといいでしょう。
今回は、東京都の場合を例に実地指導で必要な書類、また指摘されやすい事項について説明します。(あくまで例であり、実際の指導では異なる場合があります。太字の書類は、事前の提出が求められることのある資料です)
【人員関係】
人員関係の書類については、シフト表や資格証明書などが必要です。シフト表には、兼務をしている職員がいる場合は兼務の記載等も必要になります。特に児童発達支援管理責任者の不備が多くの事業所で起こっていますので注意しましょう。
- 名簿兼勤務表(シフト表)
- 出勤簿又はタイムカード
- 履歴書(常勤・非常勤等関係なく全員分)
- 雇用契約書・労働条件通知書(雇入通知書)
- 資格証明書等
- 賃金関係書類(賃金台帳、源泉徴収票等)
- 研修に関する記録
- 勤務形態一覧表が毎月作成されていなかった。
- 雇用契約書が作成されていない
- 研修実施に係る記録がない
- 勤務表に日々の勤務時間、職務の内容、常勤・非常勤の別、管理者との兼務関係を記載していない。
- 専任かつ常勤で配置しなければならない児童発達支援管理責任者が配置されていなかった。
- 児童指導員等(基準上必要な数)の半数以上が、児童指導員又は保育士となっていなかった。
【運営管理関係】
運営管理関係では、事業所運営の基本となる運営規定や虐待防止関係書類などがあります。漏れのないように注意しましょう。また、運営規定等は最新の情報の記載が必要となります。指導前に、更新されているものがないかチェックしておきましょう。
- 運営規定(最新であること、重要事項説明書との整合性に注意)
- 重要事項説明書・利用契約書(運営規定との整合性に注意)
- 事業所パンフレット
- 虐待防止関係書類 ※1
- 苦情解決に関する書類
- 衛生管理に関する書類 ※2
- 非常災害対策に関する書類※3
- 協力医療機関との間で結んでいる協定書(契約書、確認書)等
- 事故発生時の対応に関する書類(事故報告書、事故対応マニュアル、ヒヤリハット記録)
- 会議に関する記録、 業務日誌等
- 会計経理に係る書類 (決算書、各勘定元帳、領収書等証憑書類等)
- 各加算算定要件に係る書類
※1虐待防止責任者の選任、虐待防止委員会の設置規程 虐待防止委員会の議事録、 虐待防止マニュアル、 虐待防止研の研修記録、実施した虐待防止チェックリスト等。実施した記録も記載
※2感染症マニュアル、実施した感染症予防チェックリスト、健康診断に係る記録等
※3消防計画、 非常災害対策計画、避難訓練に係る記録、避難確保計画(要配慮設のみ)消防署関係書類等
- 運営規程と重要事項説明書で営業時間やサービス提供時間等の記載内容が異なっている
- 避難訓練の実施記録が確認できない。
- 事業所ごとに、障害福祉サービス事業の会計とその他の事業の会計を区分していない
- 「苦情解決の体制」が記載されていなかった。
- 重要事項説明書を利用申込者に交付したことが確認できなかった。
- 消火器の使用期限が切れていた。
- 非常口に物が置かれ、避難路が確保されていなかった。
- 掲示すべきものが事業所の見やすい場所に掲示されていなかった。
利用者支援関係
利用者支援関係では、個別支援計画など、根幹となる支援についての重要な書類が多くあります。それだけによくみられるポイントです。モニタリングと個別支援計画書やサービス担当者会議の日付の整合性などは、特に間違いが多い箇所なので注意が必要です。
- 個別支援計画書
- アセスメントシート
- サービス担当者会議記録
- 面談記録
- サービス提供記録
- モニタリング
- フェイスシート
- 身体拘束に関する書類(身体拘束を行った場合のみ)
- 受給者証(コピー等)
※受給者証を画像で保管している場合は、自治体に確認が必要
- 個別支援計画書が作成されていない
- モニタリングの記録がない
- 計画作成会議の記録として、計画原案について検討した内容が記録されていなかった。
- 計画を作成した日、同意を得た日の日付の記載がなかった。
- アセスメントに当たって、保護者及び利用児童に面接を行っていなかった。
- 計画作成会議の記録として、計画原案について検討した内容が記録されていなかった。
- 緊急やむを得ない場合に身体拘束を行うことを説明していない。
【請求関係書類】
請求関係の書類は、請求書や明細書等が必要となります。特に、減算等が必要にもかかわらず、そのまま請求している場合は、不正受給とみなされ厳しい措置が取られる可能性があるので、気を付けてくあさい。
- 障害児通所給付費等請求書等 (請求書、明細書、確認リスト等)
- サービス提供実績記録票
- 利用料等領収証(請求書)
- 法定代理受領額通知書(※法定代理受領を行わない場合は、サービス提供証明書)
- 給付費の算定がサービス提供の記録と異なっていた。
- 実利用児童数に応じた児童指導員等を配置していないにもかかわらず加算を算定していた。
- 保護者に対して領収証を発行していなかった。
- 法定代理受領した給付費の額を保護者に通知していなかった。
【届出書・一覧等】
その他、事業所の図面や預かり金台帳等も管理されている必要があります。事業所が始まり年数がたつと、書類の場所すらわからなくなっているという場合もあります。どの書類も大切なものなので、わかりやすい場所に保管しておきましょう。
- 障害児通所支援事業に係る届出書(控) ※申請、更新、変更、加算届出等
- 事業所平面図
- 各諸規程書類等 (就業規則等)
- 預かり金関係書類 (規程、 台帳等)
- 第三者評価又は利用者調査に関する書類
- 利用者一覧
- 障害児通所支援事業(加算) 算定点検表
- 変更が必要なのに届け出を出していなかった
- 就業規則が作成されていなかった
- 図面が最新のものではなかった
- 法定代理受領した給付費の額を保護者に通知していなかった。
実地指導対策のためのチェックリスト
実地指導の検査項目は多岐に渡り、用意する書類も膨大です。また書類は最新のものが必要であったり、各書類の整合性も確認されます。準備には、チェックリストなどを使うと効率的に進められます。
下記にチェックリストのテンプレートを用意したので、印刷して活用してください。
注1 検査対象期間は、 原則として検査当日以前1年間です。その期間に対応した上記書類を用意してください。(「障害児通所支援事業に係る書類」は全期間が対象です)
実地指導についてよくある質問
実地指導について、よくある質問をまとめましたので参考にしてみて下さい。
Q.書類は何年分用意したらいいでしょうか?
A.原則として1年分ですが、「障害児通所支援事業に係る書類」は、開業時からの全期間分を求められます。
Q.実地指導は「運営指導」とは違うのでしょうか?
A.「運営指導」は、介護福祉の事業所を対象にリモートで行われています。障害福祉では、対面での実地指導が続いています。(2023年4月現在)
Q.「監査」とは何が違うんですか?
A.実地指導は、事業者等が指定等の基準を遵守し、障害福祉サービスを適切に提供し、適正な介護報酬等請求を行うための指導となっており、 原則事前通知,全事業所を対象に順次実施となっています。
監査は、不正や基準違反,従業員による虐待が疑われる場合等,自治体が必要と認める場合に実施され 事前予告なし、随時実施 となっています。
上のように、実地指導と監査は全く違う性質であり、特に事前予告の有無が違います。行政指導から監査に移行し、行政処分が下れば、原則として従うほかありません。
監査の後は、命令か処分が下ります。事業停止や指定取り消しになる場合もありますので、嘘をついたり、誤魔化すことの無いように留意して下さい。
実地指導フルサポートの紹介
実地指導も監査も、法令を尊守して運営していれば問題ありません。しかし、通常の営業をしながら、最新の法令をチェックし、実地指導のための膨大な書類を常に適切な状態で用意しておくことはなかなか難しいです。
弊所では、実地指導のすべてをお任せできるフルサポートプランを用意しています。最新の法令に基づき、ヒアリング→書類の確認→検査票のお渡しで実地指導での返戻が無いようにサポートします。
実地指導について不安があるという方は、まずは無料相談でも結構ですので、お気軽にお声掛けください。
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実地指導対策の記事まとめ
【児童発達支援&放デイ】実地指導対策①~集団指導編~
【児童発達支援&放デイ】実地指導対策②~指摘事項編~
【児童発達支援&放デイ】実地指導対策③~引っかかるケース編~
【児童発達支援&放デイ】実地指導対策④~処分事例編~
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