障害福祉サービスの事業譲渡とは?メリットとデメリットや成功のポイントを紹介!

障害福祉サービスの事業譲渡とは?メリットとデメリットや成功のポイントを紹介!

事業譲渡やM&Aというと、民間のサービスを思い浮かべる方も多いかもしれませんが、最近では、障害福祉サービスや介護といった分野でも事業譲渡は活発になってきています。

障害福祉サービスや介護サービスは、行政からの指定をうけ、給付によって運営するという点で、通常の事業譲渡とは異なる点があります。そこで本記事では、障害福祉サービス譲渡における注意点や、事業譲渡の流れ、役立つサービスなどをお伝えします。

障害福祉サービスの事業譲渡とは

そもそも、障害福祉サービスにおける事業譲渡とはどういったことでしょうか。事業譲渡の考え方については、その他のサービスと変わることがなく、事業の全部、または一部を譲り渡すことを指します。

事業譲渡等とは、特定の事業を継続していくため、当該事業に関する組織的な財産を他の法人に譲渡・譲受すること

厚生労働省「合併・事業譲渡等マニュアル」

ただし、福祉サービスの場合は指定申請等が事業所単位で管理されているため、事業譲渡を行う場合は、一部事業ではなく、原則的に事業所単位で行うことになります。

障害福祉サービスの市場規模

令和5年度における厚生労働省の発表では、障害者の総数は1160万人を超えており、人口の9.2%に相当する数となっています。障害者数全体は増加傾向にあり、障害福祉サービスの利用者数は、5年前と比べて20万人以上増加しています。

厚生労働省:障害福祉分野の最近の動向「利用者数の推移(6ヶ月毎の利用者数推移)(障害福祉サービスと障害児サービス)」

障害福祉分野のM&Aの動向は

M&Aについては、正確なデータがでているわけではありませんが、厚生労働省より介護事業における合併、事業譲渡のデータが公表されています。介護業界と障害福祉業界は近似性があるため、障害福祉業界においても、M&Aが活発化している可能性が考えられます。

厚生労働省:介護・障害福祉分野におけるサービス事業者の合併、事業譲渡等

障害福祉サービスの事業譲渡の流れ

では、実際の事業譲渡はどういった流れでおこなわれるのかについて解説します。事業譲渡は、株式会社かどうかなど、法人の形態等やによって様々ですが、ここでは一般的な手続きについて説明します。また、事業譲渡は譲り受ける側、譲り渡し側がありますが、今回は譲り受け側の流れについて解説しています。

ここでは事業譲渡事態の流れを主としていますが、法人の形態が株式会社の場合は取り締まり役の決議が必要となるなど、別途法人の形式にのっとった手続きが必要となります。

①経営陣の合意

事業譲渡を行う場合は、まず経営陣の合意が必要です。合意がないままに準備を進めても、結果合意がとれなかったという場合には、まったくの無駄足となります。そのため、すべては合意がとれてからがスタートとなります。合意については、例えば株式会社であれば取締役会での意思決定など、法人としての正式な意思表示を確認するようにしましょう。

また、この段階では合意のみでまだ事業譲渡契約は決定していません。そのため、一般的にはNDAなど秘密保持契約を締結し、外部には公表しないまま手続きを進めるのが一般的です。

②自治体への相談

福祉事業の場合は、自治体が事業の指定申請を行います。そのため、事業譲渡が行われる場合は、一度自治体にも相談をし、事業譲渡について問題がないか等を確認しておきましょう。特に運営法人自体が入れ替わる場合は、廃業の上新規に指定申請を行う必要があるため、自治体の理解が必要不可欠です。

③事業の調査(デューデリジェンス)

事業譲渡の合意がとれたら、次は事業についての調査を行います。決算書や事業計画書、資産状況など、事業の状況を詳しく調査します。障害福祉事業の場合は、実際に事業所を訪問し、利用者さんや職員の様子を確認することも大切です。

この調査によって、譲渡すべき事業の範囲等が明確化されるため、しっかりと調査を行う必要があります。

④事業譲渡契約書の締結

調査がが完了したら、事業譲渡契約書を締結します。事業譲渡契約書は、事業譲渡の内容を決めるものとなります。事業譲渡の対象範囲や時期、従業員の取り扱いや事業譲渡の価格、支払い方法、瑕疵担保責任等、必要事項を決定します。事業譲渡はすべてこの契約書の内容に沿って行われるため、契約内容については、抜け漏れがないようしっかりと記載するようにしましょう。

⑤事業所への通知

事業譲渡契約が完了したら、社内外に事業譲渡についての通知を行います。事業譲渡は、取引先はもちろん、職員、そして事業所の利用者さんにとっては、大変大きな出来事となります。福祉事業所という性質上、変化への対応が苦手という利用者さんも多いことが懸念されます。そのため、事業譲渡によってどういった変更があるのかという点について、譲り受け側、譲り渡し側の双方から丁寧に行う必要があります。

⑥福祉事業に関わる申請の届出

事業譲渡の通知が完了したら、福祉事業に関する変更の届出をだします。福祉事業所の場合、法人が入れ替わる場合は、廃業のうえ、新規に指定申請の手続きが必要となります。または、同じ法人で代表者等のみが入れ替わる場合は変更届など、どういった形で事業譲渡がされるのかによって手続きがことなりますので、確認しておきましょう。

⑦事業譲渡

変更の届出等が完了したら、届け出の日時に従い、正式に事業譲渡となります。福祉サービスの場合は、単なるサービスにとどまらず、社会のインフラとしての強い側面を持ちます。事業譲渡がなされた後でも、急な変更等は大きなストレスになることを理解したうえで、運営をおこなっていきましょう。

⑧払い込み

事業譲渡が無事に完了したら、譲り受け先から譲り渡し先への払い込みが行われます。契約にそってしっかりと履行するようにしましょう。これですべての手続きは完了となります。

障害福祉サービスを事業譲渡するメリット3選

障害福祉サービスを始めたいという方の中には、事業譲渡を選択肢として考えている人もいると思います。そこで、障害福祉サービスを事業譲渡で始めるメリットを解説します。

①指定申請が簡単

指定申請が簡単になることは、事業譲渡における大変大きなメリットです。障害福祉サービスを始めるうえで一番のハードルとなるのは、指定申請を受けることです。

施設に応じて最適な不動産を見つけ、膨大な書類を提出し申請をうける作業は大変な労力ですが、事業譲渡を利用することで、すでに申請を受けた状態で事業を始めることができます。(法人ごと変わる場合は、廃業届を出してから新規に申請となるが、一度申請を受けているため非常に受けやすい)

②利用者さんや職員がいる状態でスタートできる

利用者さんや職員がいる状態でスタートできることも大きなメリットです。もし一から始める場合、職員は、運営に必要な資格をもった職員を集めなくてはいけません。特にほとんどの福祉サービスで配置が必須とされているサービス管理責任者は集まりずらいですが、事業譲渡であれば運営が可能な状態の職員さんがいる状態でスタートできます。

③運営のノウハウを活かせる

事業譲渡の場合は、その事業所の運営ノウハウを活かしながら、事業をスタートできます。特に異業種から参入した場合、福祉事業の運営を一から学んでいくことは大変です。しかし、事業譲渡であれば、それまで事業所に蓄積されてきたノウハウを利用しながら、他業種の強みもとりいれることができます。

 障害福祉サービスを事業譲渡するデメリット3選

事業譲渡は、指定申請の手間が省けるといったメリットがありますが、デメリットもあります。ここでは、事業譲渡をする上で気を付けたいデメリットについて紹介します。

①利用者や職員と合わない可能性がある

事業譲渡をした場合、経営陣がいれかわることになります。そのため、運営方針や経営理念が大きくかわり、これまでの利用者さんや職員さんと方針が合わないという可能性があります。特に福祉事業は、対人援助サービスのため、理念や方針の転換が悪影響となってしまう可能性があります。

②手続きが複雑

福祉事業における事業譲渡は、通常の事業譲渡に加えて、福祉事業部分の手続きが必要となるため、手続きが複雑になりがちです。特に初めて事業譲渡を行う場合は、専門家の助けがないと非常に難しくなってきます。また、福祉事業部分の手続きを間違えると、最悪の場合運営がストップしてしまう可能性もあるため、慎重に取り組むことが大切です。

③運営が制限される可能性がある

事業譲渡によって福祉事業を始める場合、運営が制限される可能性があります。福祉事業は始めに出した申請に基づいて、施設が運営されています。そのため、設備の変更等が簡単にできない場合あります。そのため、新規に始める場合と比べて、運営の自由度は低い可能性があることを把握しておきましょう。

障害福祉サービスの事業譲渡を成功させるポイントは?

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障害福祉サービスの事業譲渡を成功させるには、ポイントを抑えたうえで取り組む必要があります。ここでは、事業譲渡を成功させるために知っておきたいポイントをお伝えします。

自治体への相談をマメに行う

事業譲渡を行う場合は、管轄の自治体に必ず相談し、こまめに報告等を行うようにしましょう。福祉事業の申請等については、自治体に裁量が任されている部分が少なくありません。そのため、自治体の理解なくして円滑な事業運営は不可能です。

手続きを経験豊富な専門家に依頼する

事業譲渡をスムーズに終えるためには、経験豊富な専門家への依頼が必要不可欠です。特に福祉事業の場合は、通常の事業譲渡にはない手続き等が発生するため、経験のある専門家のサポートがなければ、非常に困難となります。

職員・利用者に対し十分な理解を得る

福祉事業に限らずですが、事業運営のために必要なのは、職員、および利用者さんとの信頼関係です。職員、および利用者さんは、譲り渡し前の法人との信頼関係で事業所とつながっています。そのため、新たに信頼関係を築くようにすることが何より大切です。

まとめ

本日は、障害福祉サービスの事業譲渡について解説しました。最近では、福祉事業でもM&Aが活発に行われるようになっています。事業戦略を考える際に、一つの選択肢として事業譲渡があるだけでも、運営の幅が広がりますので、ぜひ参考にしてみてください。また当事務所ではM&Aに豊富な経験がありますので、ぜひ気軽にお声掛けください。

 

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