児童発達支援・放課後等デイサービスの開業手順や成功のためのポイントを解説

児童発達支援や放課後等デイサービスの開業に興味があるけど、開業ってどうするの?開業のために必要な資金は?必要な資格は?そんな疑問をもってはいないでしょうか。

本記事では、現場経験があり多くの開業をサポートしてきたトキタ行政書士事務所が、開業の手順や成功のためのポイントを解説します。これから児童発達支援や放課後等デイサービスの開業を考えているという方は、ぜひ参考にしてみて下さい。

児童発達支援・放課後デイサービスとは

児童発達支援、および放課後等デイサービスは、障害児に向けて訓練等の支援を提供するサービスです。(児童発達支援は、6歳までの小学校就学前の児童、放課後等デイサービスは18歳以下の障害児が対象)

児童発達支援・放課後等デイサービスを開業するための条件や資格は

児童発達支援、および放課後等デイサービスは、第2種社会福祉事業であり、開業には自治体への指定申請が必要となっています。申請を受けるには、法人格の取得、設備要件や人員配置基準など、様々な要件を満たす必要があります。

開業にあたり、オーナーには資格は必要ではないですが、従業員については、児童発達支援管理責任者の資格をもつものを配置するなどの条件があります。

参考:「障害児支援施策」厚生労働省

開業の手順とは?申請から開業までのステップを解説

開業準備

児童発達支援・放課後等デイサービスは、指定申請をとる関係から、手順に沿って開業準備を行う必要があります。手順を無視して開業手続きを行った場合、物件を契約してから指定申請を取ろうとしても、申請がとれなかったという事態になりかねません。

そのため、開業までの手順を理解したうえで、無駄のない方法で指定申請を行うことが大切です。ここでは、福祉業界の未経験者でも開業までたどり着けるように、開業手順を順番に解説します。

➀法人格の取得

障害福祉事業所を開業できるのは、法人に限定されます。法人とは、株式会社、NPO法人など、法人格をもった団体となります。任意団体やボランティア団体、個人の名義では、開業できません。開業をする場合は、まず法人格を取得しましょう。

また、定款に放課後等デイサービスまたは児童発達支援を運営する旨の記載が必要です。すでに法人を取得している場合でも、定款に記載がない場合は、記載を行いましょう。

法人の例

合同会社、株式会社、社会福祉法人、医療法人、一般社団法人、NPO法人等

➁自治体への相談

法人を設立したら、まずは自治体に相談しましょう。指定申請を許可するのは、自治体です。そのため、申請を得るためには、自治体からの理解が必要不可欠となります。自治体によっては、そもそも障害福祉事業所の新規申請を受け付けていなかったり、指定協議への参加が義務付けられている地域もあり、自治体への相談なしに開業準備を進めることは大きなリスクとなります。

自治体に相談に行く際は、まず電話で予約をとったうえで訪問しましょう。予約先は自治体によって異なりますので、ホームページで障害福祉課など確認してみてください。またあらかじめ聞きたいことを整理し、自治体からの質問にも答えられるようにしておきましょう。

自治体への相談にあたり準備しておくとよい項目

  • 法人の設立経
  • 事業を始めたいと思ったきっかけ
  • 事業の準備状況
  • 地域ニーズの把握

参考:「児発・放デイ申請マニュアル」東京都

➂物件探し・職員の募集

児童発達支援、放課後等デイサービスの指定申請を受けるためには、開業前に物件を借り、職員を揃える必要があります。物件は、消防法や建築基準法を満たし、指定された広さや設備の要件に適合したものである必要があります。

指定基準に適合しなくては、申請を通すことができません。必ず、契約前に自治体に相談しましょう。

物件の設備基準の例

  • 指導訓練室の設置・・児童発達支援は30㎡以上、放課後等デイサービスは40㎡以上
  • 事務室・・4㎡以上
  • 相談室・・4㎡以上
  • トイレ・・定員に応じた個数を用意すること
  • 洗面設備・・衛生管理に配慮すること

人員については、必要な資格、および既定の人員を営業時間内に配置できるように揃える必要があります。
(各基準は、自治体によって異なるため、必ず自治体に相談しましょう。)

人員の配置基準の例

  • 管理者・・事業所ごとに配置
  • 児童発達支援管理責任者・・事業所ごとに1人以上配置
  • 児童指導員又は保育士・・一人以上は常勤であること

➃内装工事

物件の基準に問題がなければ、契約して内装工事に入ります。内装工事は、申請の前に終わらせる必要があるので、早めにとりかかるようにしましょう。

内装についても、様々な設置基準があり、遵守する必要があります。また利用者さんにとって居心地のいい空間になるよう配慮する必要があります。

内装に関する設置基準の例

  • 指導訓練室は、死角のない指導員の目が届く一つの空間とすること
  • 蛍光灯は飛散防止措置をとり、コンセントにカバーを付けること
  • カーテン等を設置すること
  • ロッカー等には店頭帽子をすること
  • 事務室には鍵をつけ、鍵付き書庫を設置すること

➄申請書類の提出

物件の契約も完了し、内装の準備が終わったら、いよいよ指定申請の書類を提出します。提出書類は各自治体によっても異なりますが、ここでは、一般的に必要とされる書類について紹介します。

書類の提出は、開業したい月の前々月までに終了する必要があるので、物件選びなどと合わせて、用意出来るものは並行して準備しておきましょう。

書類名書式または書類の入手場所
指定申請書自治体ホームページ等
付表自治体ホームページ等
障害児(通所・入所)給付費算定に係る
体制等に関する届出書
自治体ホームページ等
障害児通所・入所給付費の算定に係る
体制等状況一覧表
自治体ホームページ等
社会保険及び労働保険への加入状況にかかる確認票自治体ホームページ等
登記事項証明書(原本又は原本証明)又は条例等法務局
平面図作成
施設写真作成
設備・備品等一覧表作成又は自治体ホームページ等
土地・建物登記簿又は賃貸借契約書(写)法務局又は不動産業者
管理者の経歴書作成又は自治体ホームページ等
児童発達支援管理責任者の経歴書作成又は自治体ホームページ等
児童発達支援管理責任者の実務経験証明書作成又は自治体ホームページ等
児童発達支援管理責任者の資格等の証明書(写)対象者より入手
児童発達支援管理責任者の研修修了証明書対象者より入手
運営規定作成又は自治体ホームページ等
利用者からの苦情を解決するために講ずる措置の概要作成又は自治体ホームページ等
勤務形態一覧表作成又は自治体ホームページ等
資格証・実務経験証明書対象者より入手
協力医療機関および契約書類作成又は自治体ホームページ等
就業規則作成又は自治体ホームページ等
事業開始届作成又は自治体ホームページ等
事業計画書作成又は自治体ホームページ等
収支予算書作成又は自治体ホームページ等
耐震化に関する調査票作成又は自治体ホームページ等

参考:「指定申請のしおり」東京都福祉局

⑥現地調査

指定申請の前月には、自治体による現地調査が行われます。(こちらも自治体によって時期は前後する場合あり)

現地調査では、申請書類に基づき、設備や人員基準、運営基準等を満たしているかどうかをチェックされます。チェックの結果、重大な修正事項等があった場合、開業が遅れてしまう可能性もあります。自治体によっては、各基準のチェックリスト等を提供している場合もありますので、調査前に必ず確認をしておきましょう。

現地調査で問題がなければ、いよいよ開業となります。

開業の為に必要な資金とは

児童発達支援開業のステップ

児童発達支援、放課後等デイサービスを開業する場合、概ね1000万円前後の資金が必要です。また、開業までは早くても3,4か月の期間が必要であり、売り上げが入るのは開業準備を始めてから半年以上先となります。

指定申請する際も、資金面で不安があると申請が下りない可能性もあります。開業規模にあわせて、十分な資金を準備したうえで準備をすすめましょう。

ここでは、開業のためにかかる一般的な費用を解説します。

法人設立費用

法人がまだない場合は、法人設立費用がかかります。法人設立費用は、法人の種類によって異なりますが、概ね10万円~30万円程度となります。設立を代行してもらう場合は、その分の費用もかかります。

種類別の法人設立費用

  • 合同会社・・約10万円(電子定款の場合約6万円)
  • 一般社団法人・・約12万円
  • 株式会社・・約20万円
  • NPO法人・・無料

物件費用

物件を賃貸する場合は、その費用が必要となります。物件は要件を満たす広さ、設備を備え、法令を遵守したものである必要があります。また開業前の段階での契約を終えていなくてはなりません。物件費用は地域によっても異なりますが、都内であれば敷金、保証金等もあわせ、150万円前後を見ておくと安心です。

内装費

内装については、法令を尊趣し、様々な規約に対応したものであることに加えて、事業所のカラーをだせるようにこだわったものが望ましいです。最近では、福祉施設であっても、デザイン性が高い内装が人気です。内装費はおおむね50万円~100万円程度をみておきましょう。

採用費用

児童発達支援や放課後等デイサービスを開業する場合は、職員の採用費用が掛かります。通常募集を行っただけでは求人も見込めないため、採用サイトや求人広告、チラシなどを利用する場合が多いでしょう。費用は、利用する手段によってまちまちですが、30万円~50万円ほどは用意しておきたいところです。

備品購入費用

児童発達支援や放課後等デイサービスを開業する場合、様々な備品を用意する必要があります。サービスを提供するための器具や職員用のPC、ロッカーなど、多くの備品を揃える必要があります。用意する備品にもよりますが、50万円~100万円程度は用意しておくといいでしょう。

 運転資金

運転資金は、売り上げが入るまでの人件費や家賃などの支払いにあてる費用です。児童発達支援や放課後等デイサービスの場合は、開業希望の前々月辺りには物件を契約し、また人員も確保する必要があります。

また、開業しても国からの給付金が入るのは2カ月先となり、利用者がいなければ当然売り上げは立ちません。そのため、開業準備を介してから半年~9か月程度は収入がなくても耐えられる程度の運転資金を用意しておきましょう。運転資金は500万円程度あれば安心です。

開業資金内訳例

法人設立費用+物件費用+内装費+採用費用+備品購入費用+ 運転資金
  10万   150万  100万  50万    100万    500万 =910万円

開業資金を集める方法とは

開業にあたり、どのように資金を集めるのかも気になるポイントですよね。自己資金といった方法もありますが、なかなか自己資金だけで1000万円を超える資金を集めるのも大変です。そこでここでは、開業にあたり資金を集めるための方法を3つ紹介します。

融資を受ける

融資を受けるのは資金集めのためにおすすめの方法です。福祉事業の場合は、日本政策金融公庫のソーシャルビジネス支援金やwamの福祉貸付事業であれば、無担保でも融資を受けられる可能性があるので、検討してみるといいでしょう。

既に別に事業をしていて実績があるという場合は、都市銀行や信用金庫も選択肢にいれた上で融資を検討してみて下さい。

児童発達支援・放課後等デイサービスにおすすめの融資

クラウドファンディング

クラウドファンディングも、資金集めとして活用したい方法の一つです。クラウドファンディングとは、プラットフォームサイトなどを通じて、不特定多数の方から資金を集める方法です。

クラウドファンディングは資金集めだけでなく、知名度向上にもつながりますので、自己資金で運営できる場合でも挑戦してみることをお勧めします。

児童発達支援・放課後等デイサービスにおすすめのクラウドファンディングサイト

補助金を活用する

補助金や助成金も、資金集めには最適な方法です。ただし、単に福祉事業を開業するという場合に、直接的に使える補助金や助成金はなかなかありません。

別業種からの転換といった場合には、事業再構築補助金を活用する、雇用のための助成金を活用する、備品の購入のために民間の補助金を利用するといった方法が考えられます。その他、地域の社協等で募集している補助金情報を調べてみるといいでしょう。

児童発達支援・放課後等デイサービスにおすすめの補助金

開業・運営を成功させるポイント3選

開業のポイント

放課後等デイサービスや児童発達支援は開業するだけでも大変です。せっかく開業するなら、成功させたいですよね。そこで、ここでは現場経験もあり、今は開業支援を行っている経験から、開業や運営を成功させるためのポイントをお伝えします。

開業前から集客を始める

運営を成功させるためには、開業前から集客をしておくことをおすすめします。児童発達支援や放課後等デイサービスは、売り上げが振り込まれるのは利用者さんが通所してから2か月後となります。そのため、開業してから集客を始めると、どんどん売り上げの振り込みが遅れてしまいます。

開業前から募集を行ったり、SNSやホームページで情報を発信し、集客を始めておきましょう。

固定費を抑える

児童発達支援、放課後等デイサービスは、利用者さんが定員に達したら売り上げの上限となります。そのため、利益を出すためにはどれだけコストを削減できるかが重要となります。特に人件費と家賃の占める割合が大きいので、この二つは出来るだけ抑えるようにしておきましょう。

加算を獲得する

福祉事業の運営は、通常の基本報酬だけで黒字を獲得することは難しいです。そのため、出来るだけ効率よく加算を獲得することが大切です。介護職員等処遇改善加算、送迎加算など、事業所にあわせて加算を可能な限り取得しましょう。

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児童発達支援・放課後等デイサービスの開業についてのよくある質問

その他、児童発達支援や放課後等デイサービスの開業についてのよくある質問をまとめました。この先開業を考えているという人は、ぜひ参考にしてみて下さい。

Q.開業の手続きは自分でも出来ますか?

A.開業の手続きについては、独占業務等ではないため、自分で行うことができます。ただし、準備には多くの書類を手際よく準備し、並行して物件探しや求人も行う必要があります。慣れない手続きには時間もかかります。個人で出来なくはないですが、かなり大変な作業になります。

Q.開業にあたり資格は必要ですか?

A.開業するために必要なのは、法人格であり、資格は必要ありません。ただし、児童発達支援管理責任者といった必要な人員配置は漏れなく行う必要があります。

Q.開業にかかる期間はどれくらいでしょうか?

A.自治体によっても異なりますが、早くても4か月程度、書類の修正等が入る可能性も考え、半年程度の期間はみておいた方がいいでしょう。

Q.運転資金はどれくらい用意すればいいですか?

A.運転資金は、(家賃+人件費)×6か月程度は最低でも用意しておくことをお勧めします。

Q.給付金が振り込まれるのは開業してからいつ頃になりますか?

A.国から給付費が振り込まれるのは、サービス提供月の翌々月の中旬から下旬となります。たとえば4月に開業した場合、売り上げが振り込まれるのは6月中旬から下旬です。

Q.福祉事業は儲かるといわれていますが、本当に利益を出せますか?

A.放課後等デイサービスや児童発達支援事業所の平均利益は5%前後と言われています。しかし、中には30%以上の赤字を出している事業所もあり、しっかりと経営しなくては利益を出せる事業ではありません。

まとめ

本日は、放課後等デイサービス、および児童発達支援の開業方法や開業手続き、資金について解説しました。これから開業を考えているという方は、ぜひ参考にしてみてください。

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