【令和の事業所は必須!】障害福祉サービス等における各種手続き・記録の電子化【個別支援計画や利用契約書など】
障害福祉サービス等における各種手続き・記録の電子化について解説します。
【この記事でわかる3つのポイント】
- 障害福祉現場の書類業務負担と電子化の必要性
- 電子化すべき主要な手続き・記録とそのメリット・デメリット
- 電子化推進における具体的なステップと留意点
1. 障害福祉現場の書類業務負担と電子化の必要性
障害福祉サービス事業所では、利用者一人ひとりに寄り添った支援を行う一方で、膨大な書類業務に追われているのが現状です。個別支援計画の作成・同意、重要事項説明書の交付、日々のサービス提供記録など、その種類は多岐にわたります。
厚生労働省の調査においても、介護・福祉分野におけるICT化の進展が、業務負担軽減や生産性向上に繋がると期待されています。特に、情報共有や記録の電子化は、支援の質の向上にも直結すると考えられます。
また、書類を保管・保存する際に場所を取らないという大きなメリットがあるだけでなく、運営指導の際にも、自治体によっては「データで見せて貰えれば大丈夫です」と言ってもらえる場合もあり、書類の準備が格段に楽になります。
2. 電子化すべき主要な手続き・記録と、そのメリット・デメリット
ここでは、特に電子化が推奨される主要な手続き・記録と、そのメリット・デメリットを具体的に解説します。
2-1. 重要事項説明書等の交付
事業所の運営方針やサービス内容を記載した「重要事項説明書」は、利用者との契約時に必ず交付が義務付けられています。
メリット: 電子データでの交付は、印刷・郵送コストの削減、紛失リスクの低減、保管スペースの削減に繋がります。利用者側も、PCやスマートフォンでいつでも内容を確認できます。
デメリット: 利用者側にデジタル機器の操作スキルや閲覧環境がない場合、紙媒体での対応が依然として必要となる可能性があります。
2-2. 個別支援計画への同意・交付
利用者の支援目標や内容を定めた「個別支援計画」は、利用者(保護者)の同意を得た上で交付が義務付けられています。
※電子化については、利用者様から「事前承認」を得る必要があります。
https://www.city.toyonaka.osaka.jp/kenko/shougai/syogaifukushi_gyosha/shioshirase/denshika_qa.html
メリット: 電子署名システムを導入すれば、遠隔地からの同意もスムーズになり、書類の回収・保管の手間が大幅に削減されます。計画の修正・共有も迅速に行えます。
デメリット: 電子署名の有効性や法的な解釈について、利用者や関係機関が不慣れな場合、理解を促すための説明コストが生じる可能性があります。
2-3. 個人情報利用同意書への同意
利用者の個人情報をサービス提供のために利用することへの同意書も、電子化の対象です。
メリット: 同意取得のプロセスをデジタル化することで、より効率的かつ確実に同意を得ることが可能になります。同意状況の一元管理も容易です。
デメリット: 個人情報保護に関するセキュリティ対策が極めて重要であり、システム導入には慎重な検討が必要です。
2-4. サービスの提供の記録(実績記録票を含む)への確認
日々のサービス提供内容を記録した「サービスの提供の記録」や「実績記録票」は、利用者(保護者)の確認が求められます。
メリット: 利用者(保護者)がタブレット端末等で直接確認・電子署名を行えるようになれば、毎日の確認作業が格段に効率化されます。記録の正確性向上にも繋がります。
デメリット: サービス提供時における機器の持ち運びや、利用者への操作説明が必要となります。
3. 電子化推進における実践的アドバイス
電子化を成功させるためには、以下のステップと留意点が重要です。
現状分析と課題特定: まずは、現在の書類業務のボトルネックや非効率な点を洗い出します。
適切なシステムの選定:
- 価格: 初期費用だけでなく、月額費用やサポート費用なども含めたトータルコストを比較検討しましょう。
- 操作性: 現場の職員が直感的に使えるインターフェースであるか、デモなどを通じて確認することが重要です。
- 柔軟性: 現場のニーズに合わせて機能がアップデートされるか、開発体制が整っているかも長期利用には不可欠です。多くのICTシステムは「現場の声を聞きながらアップデート」することを謳っていますが、その実績を確認することが重要です。
- 事前承認:利用者さんから電子化に基づく事前承認を得ることも必要です。求められた際に紙で出力できるか?も重要な観点です。
職員への研修と理解促進: 新しいシステム導入には、職員の協力が不可欠です。操作研修だけでなく、電子化の意義やメリットを共有し、抵抗感をなくすための働きかけが重要です。
段階的な導入: 全ての電子化を一気に進めるのではなく、まずは効果が見えやすい部分(例:サービス提供記録の電子化)から段階的に導入し、成功体験を積むことで、組織全体の意識改革を促しましょう。
セキュリティ対策の徹底: 個人情報を取り扱うため、アクセス制限、暗号化、バックアップ体制など、情報セキュリティ対策は最優先で講じる必要があります。
まとめ
まずは個別支援計画が最も手を付けやすいかと思いますが、事前承認が必要な点にはご留意ください。
タスクとしては、以下の3点です。
①システムの選定と導入
②研修と理解促進
③事前承認(この段階で念のため、行政に確認を取るのも良いと思います。)
障害福祉サービス等における各種手続き・記録の電子化は、業務効率化の大きな推進力となるだけでなく、職員が本来のケア業務に集中できる時間を創出し、結果として利用者への支援の質向上に繋がります。適切なシステム選定と段階的な導入により、持続可能な事業運営を目指しましょう。
参考文献・引用元:
厚生労働省: 「ICTを活用した介護現場の業務効率化について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_kourei/douga/index.html (介護分野の資料ですが、障害福祉にも共通する視点が含まれています。最新のURLは厚生労働省ウェブサイトでご確認ください。)
総務省統計局: 「労働力調査」 (間接的な引用ですが、労働力不足の背景を示すデータとして)
https://www.stat.go.jp/data/roudou/index.html (最新のURLは総務省統計局ウェブサイトでご確認ください。)
令和3年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.5(令和3年6月 29 日)
1.障害福祉サービス等における共通的事項
(1)障害福祉サービス等における横断的事項
(電磁的記録)
問1 「電磁的記録」とはそもそもどのようなものを指すのか。
(答)
「電磁的記録」とは、電子計算機(パソコン、スマートフォン、タブレット等)による情報処理の用に供されるものをいう。
(電磁的記録による保存)
問2 電磁的記録による保存について、「作成された電磁的記録を事業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスク等をもって調製するファイルにより保存する方法」とは具体的にどのような方法をいうのか。
(答)
電磁的記録による保存とは、①電子情報処理組織(ネットワークとそれに接続された電子計算機、すなわち、ネットワークに接続されている状態のパソコン、スマートフォン、タブレット等をいう。)を使って作成された電磁的記録を保存する方法、又は②作成された電磁的記録をフロッピーディスク、ミニディスク、シー・ディー・ロムなどに保存する方法をいう。
(電磁的方法による交付①)
問3 電磁的方法による交付について、①「事業者等の使用に係る電子計算機と利用申込者の使用に係る電子計算機とを接続する電気通信回線を通じて送信し、受信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法」及び②「事業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された基準第5条第1項に規定する重要事項を電気通信回線を通じて利用申込者又はその家族の閲覧に供し、当該利用申込者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該重要事項を記録する方法」の具体
例を教えてほしい。
(答)
①の具体例としては、電子メールなどで、相手のパソコン等のフォルダに電磁的記録を送信する方法が、②の具体例としては、事業者等が自分のホームページに電磁的記録を掲載し、それを利用申込者又はその家族がダウンロードできる状態に置く方法がそれぞれ想定される。
(電磁的方法による交付③)
問5 電磁的方法による交付の方法は「利用申込者がファイルへの記録を出力することによる文書を作成することができるものでなければならない」とあるが、どのような趣旨か。
(答)
利用申込者に交付した電磁的記録については、当該利用申込者が、紙にプリントアウトすることが可能な状態でなければならないという趣旨である。
(電磁的方法による交付④)
問6 電磁的方法による交付を行うに当たって事前に利用申込者等に対して承諾を得る必要がある事項のうち、「ファイルへの記録の方式」については、例えばテキストファイルやドキュメントファイル、PDFファイルなど、どのファイル形式で記録するかを指すという理解で良いか。
(答)
お見込みのとおり。
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